一級建築士試験について

1.初めに

 まず初めに、この記事は一級建築士試験の勉強内容や方法をまとめた記事ではございません。そういったサイトやページは、数多とあるのでそちらを参考にしていただくことをオススメします。

 この記事では、平成28年一級建築士試験を受験して、なんとか合格した私の所感や記憶を書き殴っています。自分の出来事が、今後、建築士試験を受ける方の参考や気休めになればと思い、まとめています。

2.自分が試験を受けるまで

 一級建築士試験と聞いて、読んでいる方はどのような印象を持たれているでしょうか?「とても難しいと聞いたことがあるので自分には関係ないかな」とか、「建築系の学校を出てれば誰でも受かるんでしょ?」とか、受けた人ならば「全然受からない試験だ」とか、「苦もせず一発で受かった」とか、色々考えられます。

 私自身は、建築系の大学を卒業するまで「自分には一切関係のない試験だ」と思っていました。一切関係のないというのは、大学生時代、建築士はなんとなく大変そうだなぁというイメージを勝手に持っていたので、建築士の資格が必要のない会社で、建築に携わって頑張ればいいかなと思っていました。

 しかし、いつの間にか、受けていました。自分でもよくわかりません。記憶にないです。

 なんだそれ?と、思った方がいるかもしれませんが、人生そういうことの方が多い気もします。自分は関係ないや、と思った時の方がそういうのを呼び寄せやすいみたいです。

 そんな自分には縁のないと思われていた試験を受けることになったので、どんな印象を持っていようが、機会は向こうから飛んで来ることもあります。その時に受け入れるか拒否するかくらいは準備した方がいいかもしれません。

3.試験の捉え方

 一級建築士試験ですが、難しい資格試験と言われるには三つの理由があると思います。以下が自分の考える理由です。

  • 受験資格要件が特殊
  • 合格率が低い
  • 範囲が広い

と、この三つな気がします。

 受験資格要件が特殊というのは、ご存知の通り、誰でも受験できるわけではありません。詳しい要件などについては、「建築技術教育普及センターホームページ」(以下センター)を見ればわかりますが、どのような学歴であっても試験を受けるには実務経験が必要となります。つまり学歴だけでは受験することができず、受験者のほぼ全員が、仕事をしながら資格を取得することになります。つまり受験者は、仕事の合間を縫って勉強をし、挑まなければなりません。さらに社会人ともなれば、自身の生活のこともあるのでなかなか試験勉強だけに集中することが困難と思われます。

 次に合格率が低いという点ですが、これも同様にセンターを見れば、直近3年間の合格率がわかります。新試験制度以降、合格者の割合は概ね12%を推移しております。12%という数値でもそれなりに低いのですが、試験自体が年に一回しかなく、試験が一次(学科)と二次(製図)に分かれており、その両方をパスしなければなりません。また、二次試験は現在、3回目まで受験の猶予が与えられています。つまり一次試験をパスして二次試験に落ちても、後の二回は一次試験が免除されます。それなら合格率は上がるんじゃないか?と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。この試験は一次試験自体の合格率が概ね16~18%程度であり、その合格者から更に二次試験で概ね40%程度が合格するのですが、この合格は相対評価となっております。つまり、その年ごとの試験によって合格のボーダーが変わってきます。例えば100点満点の試験だとして、その年の合格点が72点だとしても、次の年は75点であったり、70点になったりします。要するに、合格のボーダーが予め決められているのではなく、その年の受験者の出来具合によって合否が左右されます。この相対評価の特徴として、毎年の合格者数を一定にすることが可能です。資格保有者の調整をしたい国にとっては一番の手法です。その代わり、受験者のレベルが高いとボーダーに食い込むのが難しくなったりします。逆も然りです。さらに二次試験は先ほど述べたように、3回受験が可能なので、初めて一次試験に受かって二次試験に挑む時には、昨年若しくは一昨年に二次試験を受けた受験生も土俵に上がってきます(所謂カド番)。その中で相対評価で40%に食い込まなければ合格しないので、難易度は上がっています。ちなみに某大手資格学校の集計によれば、一次と二次を一発で通過する人は、受験者数のおおよそ6%程度になります(H28年)。

 最後に範囲が広いという点ですが、センターに掲載されてある過去問を閲覧すればわかりますが、これは建築の分野自体が幅広い知識を必要としています。一次試験の学科は、計画、環境設備、法規、構造、施工の5科目に分かれて出題されており、その範囲はとても広いです。加えて建築という分野は、常に新しい技術や見解が生まれています。昔からある知識はもちろんのこと、新しい知識も蓄え続けなければ、試験に挑むことができません。二次試験の製図についても、それらがついて回ってくるので同様です。

 これらの点を踏まえて難しいと言われているのかと思われます。自分でも書いてて嫌になってきました。

4.資格学校について

 建築士試験を受けるにあたって、勉強をするために資格学校に通う方がほとんどだと思われます。受験者の中には独学だけで合格される方もいれば、いろんな資格学校に通って何回も受験されている方がいるのも事実です。私自身、資格学校に通ってストレートで合格しましたが、結論から言えば私は「通うべき」と思います。

 少し話が逸れますが、私が中学受験のために小学生の頃に通っていた塾で、先生が話したことを今でも覚えています。確か保護者を含めた説明会の時の発言でした。

「受験生を無作為に100人集めて勉強をさせてテストを受けさせると、とある一人はほとんど何もしなくても一位を取れる。逆にとある一人は何をしても最下位のまま。それ以外の98人は、勉強してた人から順位がついている。受験者の98%が最初はみんな同じレベルなんです」

 これは建築士の試験でも同じことが言えると思います。無理やり受験をさせらされている人は除いて、建築士の試験を受ける人の1%は、独学でも簡単に受かってしまうでしょう。逆にどれだけお金を注ぎ込んで多くの勉強をしても受からない人が1%はいるでしょう。今更ですがそういった人はこの記事を読む理由がないかもしれません。

 しかし、残りの98%はみんなほぼ同レベルです。その中で多く勉強をした人が上位に入ります。逆に勉強をしなければ例え上位にいても必ず下位に落ちます。これを読んでいるあなたが前述の2%ならば何もいうことはありません。しかし多くの人がその98%だと思います。

 話を戻すと、私が資格学校に「通うべき」と思っているのはこれが理由です。

 一部を除いて多くの人は勉強をすれば上位にいけます。しかし、勉強が遅れていると一瞬で下位に落ちます。

 資格学校の講義や資料はどこも充実しています。多少の差はあれど、勉強の進める順序やスピード、講師に対する質疑など、勉強をする上でプラスに働くことが多くあります。私自身、初めて資格学校で授業を受けた時、こんな速度で授業を進めるのかと思いましたが、全ての範囲を勉強し終わった時には、既に試験日が目前でした。これは資格学校に通わなければ絶対に気づかなかったことだと今でも思います。そして自分は98%の中の下の方にいることも認識できました。

 こうした理由から、自分が今どのレベルにいるのかを把握するのに、資格学校はとてもいいところです。そんなわけで受験者の98%は資格学校に通うべきです。

 

 

5.合格する人と落ちる人の特徴

 私が資格学校で勉強をしている時、何人かの受講生と話す機会がありましたが、受かった人もいれば、一次もしくは二次試験で落ちた人もいました。

 そんな受かった人と落ちた人を見ていると、一度しか受けていない自分で少し違いが見えてました。

 それは、勉強時間が確保できているか否かです。

 そりゃまぁ当たり前だろうという感じですが、受かった人は当然勉強時間を多く取っています。しかし、落ちた人は総じて勉強時間が少なかった印象です。

 具体的に言うと、落ちた人は全員仕事が忙しく、学校の授業にあまり出れず帰宅してから勉強できていませんでした。もちろん毎日ではありませんでしたが、少なくとも授業の小テストの成績は伸びていませんでした。

 こんなの当たり前のことなんですが、毎年落ちてる人はとにかく時間に追われていました。はっきり言って、そこまで忙しくて何回も受けるのは私には絶対できません。労力と時間とお金だけが失くなります。受からなければ何も残りません。

 私は忙しいことを理由に色々と言い訳をしたくなかったので、勤めている会社で資格勉強を始める際に、「今年必ず資格を取りますので、仕事を多く振らないでください」と、宣言しました。会社で一番下っ端の言う台詞じゃないです。最初こそ怪訝な顔をされましたが、最後の方は社員全員が応援してくれてました。もし落ちた時は「すいませんでした」の一言で片付けるつもりでした。それでクビになってもいいかなって感じです。同じことをしろとは言いませんが、少なくとも周りの人に真剣であることを宣言して取り組むと言う姿勢が必要だと思います。別に死にはしないので。

 要するに、本気で資格を取りたいのであれば、自分の周りの環境をどうにかすることが必要です。でないと落ちます。高い確率で。無理ならばそこを辞めるか、資格自体を諦めてください。自分が普通かそれ以下であるならばそれくらいの覚悟は持っていいと思います。

6.最後に

 色々と書きましたが、当たり前のことしか書いてないです。でもその当たり前のことに気づくのがあらゆることへの最短ルートなのかとも思います。建築士試験に限らず難しいことにぶち当たることも多々ありますが、何事も真剣に取り組むことだと思います。

 「真剣は柄(つか)で斬れ」と言います。これは相手を切る時は「刀」ではなく、「柄」で切るように一歩前に踏み込むことだと。そうでなくては人間、臆して相手に致命傷を与えることはできません。

 資格試験が自分の敵であるならば、その敵を倒すための致命傷を与えるのに、真剣になる必要があると言うことです。真剣でなくては勝利はありません。今一度、真剣になってみてはいかがでしょうか。

 そして私自身がこの試験を真剣に取り組んでみた感想として、大変な試験ではあるが、難しいと感じた事はそんなにありませんでした。時間を掛けて、自分に合った勉強をしていけば誰でも取れる資格なのかなぁと感じました。

 なので臆せず挑戦して欲しいと願っております。

 

 そしてここまで読んでくださった方に、勝利があることを願っております。